突然ですが、フェロモンが恋に大きく作用するって知ってますよね。
人を含め、動物は、無意識のうちに異性のフェロモンを嗅ぎ分け、恋に落ちてしまいます。個々のフェロモンは、遺伝子の型によって決まっていて、嗅いだ方は相性の良い相手の匂いにだけ発情するような仕組みになっています。
ありがたいことに、それぞれのフェロモンにひかれる相手というのは、必ず誰にでも一定数以上存在しているのだそうです(楽観的に考えれば多数いるということでしょうか)。
でも、そのフェロモンも「長身で、容姿の整った、高収入の優しい人」というような強力なフィルターを掛けてしまうと、本来受けて当然の求愛も、迷惑メールやスパムメールのようにブロックされてしまいます。
結果、「だって、いい男がいないんだもん!」となり、彷徨い続けることになります。「いい男がいない=自分でまいた種」ということなのかもしれません(自省も含めて)。
その点、「靴に恋する人魚」のビビアン・スー演じるヒロインは、遺伝子のシステムにとても忠実。勤務先は出版社という人がうらやむような所、だけど仕事はお手洗いの掃除や電話番がメインでちっともオシャレじゃない。それでもビビアンは、いつも控えめな態度で、サポート役に徹しています。
一方で、自分のチャームポイントである脚の魅力を最大限に引き出してくれる「靴」に対しては、少ないお給料をやりくりして、次から次へと資本投下をしてしまう女性なのです。要するに、「長身・ハンサム・高収入」などのフィルターは一切掛けないでおいて、自分のフェロモン効果が最大限に発揮できるテリトリーをひたすら拡張しようと目指すタイプ。拡張するテリトリーは脚フェチや靴フェチがうごめく、ちょっとマニアックでニッチなエリアかもしれないけれど、たまさか「長身でハンサムな歯医者の青年」もやってくることがあるから世の中わからないのです。人は、いろんな面を持っているということでしょうか。
作品中のビビアンも自分のテリトリーにやってきたハンサムな歯医者に反応します。
虫歯の治療に出かけてゆく時には、200足の靴の中から歯医者さんに「かわいいい!」と思ってもらえそうなラブリーな一足を吟味して出かけて行きます。勝負服ならぬ勝負シューズです。

そんな努力が実って、やがてビビアンはハンサム歯医者から夕食に誘われ、プロポーズを受け、結婚します。ここまでだったら、よくあるハッピーエンドものですが、この作品は違います。
賞味期限ギリギリの女性が射止めたエリート歯科医との結婚生活は、ただ、甘いだけではなく、厳しい現実に直面することでもあったのです。 冒頭では、まるで、『アメリ』のように夢見がちだったビビアンが、世の中の残酷な現実を受け入れ、失意のどん底にあえいでいても、キュートさを失うことなく大人の女性として成長してゆく姿は必見です。是非、劇場まで足を運んでみてください。
ただのおとぎ話では終わらせなかった若き女性監督のメッセージが伝わってきて泣けますよ。
公開は9月9日より新宿武蔵野館にて。初日は歯科医役のダンカン・チョウが舞台挨拶の予定です。
詳しくは劇場(03-3354-5670)まで。
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