数年前のGWのことです。
銀座のチョコレート専門店に、なぜか突然お客が押し寄せ、バレンタイン並みの賑わいに。そのわけは、丸の内の劇場で『ショコラ』を観た人たちが、こぞってチョコレートを買い求めからです。
30秒のCMでも食べたいと思うのに、2時間以上、次から次へとおいしそうな映像を観せられたのだからたまりません。観客たちがこぞってチョコレートを買いに走ったのは、むしろ自然な行動といえるでしょう。

さて、こんなふうにチョコレートを食べたくなってしまう『ショコラ』のもうひとつの効用は、心を温かくしてくれること。
排他的で厳格な村人が住むフランスの片田舎に、母娘連れがたどり着きます。そこで母娘はチョコレートショップを開き、暗く排他的で人を受け入れようとしない村人の心を、明るく解放的なものに変えてゆくのです。
ヒロインのチョコレート職人=ショコラティエンヌを演じるのはジュリエット・ビノシュというフランスの女優さん。人のよさをにじませる笑顔は、村人を変えていく役にピッタリです。
相手役は、ジョニー・デップ。
この『ショコラ』といい、昨年の『チャーリーとチョコレート工場』といい、チョコレートにはなにか縁があるのかもしれませんね。
今回は、ヨーロッパを旅するロマンティックなジプシー役で登場し、ジュリエット・ビノシュが演じるショコラティエンヌと恋に落ちます。
チョコレート屋の従業員にはレナ・オリン。夫の家庭内暴力に怯える主婦を好演。店で働きながら、人間としての尊厳を取り戻してゆきます。 一片のチョコレートが
さて、一番の見所です。
どこの世界でもそうですが、新しい動きには必ずそれを阻止しようとする人間が存在します。このあたり、いい悪いは別にして、小泉さんと抵抗勢力なんてその典型ですね。
『ショコラ』でも、同じような人間が登場します。母娘が来てから「チョコレートが村人を堕落させる」と主張し続けた村長さんです。
村長さんは、村の変化を見逃すことができず、とうとう、店に忍び込み、チョコレート像をぶち壊し始めます。勇ましく始まった破壊活動ですが、欠片のひとつが偶然唇に載ってしまいました。何気なく舐めてしまった村長は、もう後戻りはできません。手当たり次第にチョコレートを食べまくり、暴れ疲れて眠ってしまいました。
目覚めた村長とあきれ顔のビノシュ。心がかよい合う瞬間はとてもステキです。
ヒューマンドラマって、深遠なものが多いですが、『ショコラ』はチョコレートが、心を通わすツールにもなりえることを教えてくれます。「チョコレート」に限らず、美味しいものは心を豊かにしてくれますもんね。
観る人すべてを優しい気持ちをさせてくれる『ショコラ』。是非、チョコレートと一緒に。
ショコラティエンヌを演じるジュリエット・ビノシュは、最近『綴り字の季節』という作品で、精神を病み、安ピカ集めに興じるお母さんを演じましたが、イマイチ話題になりませんでしたね。笑うと善人丸出しの表情になるので、ダークな役はあまり上手くないみたいです。
ジョニー・デップは、今でこそオカマの船長として全国区ですが、以前は頭痛持ちみたいな暗ぁーい顔をして、古本屋、刑事、作家といったアヤシイ役を得意とする「アンニュイ系」の俳優でした。
店員役のレナ・オリンは、『蜘蛛女』というB級映画で、運転中のドライバーの首を後ろの席から脚で締め上げ、苦しむドライバーを尻目にゲラゲラ大笑いをするという荒技を披露したキャリアの持ち主で、どこへ向かってゆくのだろうとかげながら心配していたのですが、この作品の役どころは見事でした。
2000年/アメリカ/121min
配給:アスミック・エース・松竹
監督:ラッセ・ハルストレム
次回の「今夜はこれを借りて帰ろう」は11月3日アップ予定です。
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