この夏、汗びっしょりのはずなのに、さわやかさにしか感じさせなかった「ハンカチ王子」が多くの女性の心をとらえました。私の周りには、汗臭いおっさんしかいないので、彼のさわやかさが余計印象に残りました。
彼、「ハンカチ王子」であれ、イングランドの「ウィリアム王子」であれ、女の子にとって「王子」ということばが放つキラキラ感は、いつだって特別。若くて、ハンサムで、お金持ちで、地位があって、優しくて、教養があって、スポーツ万能で……要するに、女の子の理想と希望と願望をすべて満たしたおとぎ話の王子さまの現実版に思えるのでしょう。だから、もし本当に王子が現れて、お妃選びの舞踏会が開かれるとしたら、今の彼にはちょっとひっこんでもらって、なんとしても参加したくなりますよね。

今日ご紹介する『エバー・アフター』は、そんな女の子たちの永遠の夢を、ドリュー・バリモアが演じる主人公ダニエルがちゃっかり叶えてしまうハッピーラブストーリーです。そう、ドリュー・バリモア版のシンデレラなんです。
ドリュー・バリモアのシンデレラは、善良でかよわいだけの召使ではなく、とにかくパワフル。継母と義理の姉たちにコキ使われてはいるけれど、大事な本を焼いた姉をグーで殴るわ、奴隷に売られても父親仕込みの剣を使って脱出するわ、生き残るための技術とエネルギーに満ちています。苦労は人を強くするということでしょう。

王子と一緒の森のシーンなんかさらにすごい。
突然現れた大勢の山賊に襲われると、王子は剣を抜いて、ダニエルを守ろうとする。でも多勢に無勢で、結局、捕らえられてしまうのですが、その後ダニエル1人は解放されることになります。その時、山賊の親分から「担げるものだけ持って行ってよし」と言われると、彼女はなんのためらいもなく王子を肩に担いで一目散に逃げ出してゆくのです。
必死になると思わぬ力がでることを「火事場のバカ力」といいますが、恋もまたすごい力を発揮させるんですね。
女の子のストレートな恋心と必死さが伝わってくる素晴らしいシーンで、これ以上の愛情表現があるだろうかと思うほどです。
そんなダニエルの愛の力に山賊も完敗。この夜、山賊たちは2人を夜の宴に招待してくれちゃうほど、ファンになってしまうのです。(この日の朝帰りがあとあと大きな問題を起こしたりもするわけですが……。) 相手が王子ですから、ダニエルには大勢のライバルがいます。その美女たちを打ち負かしてゆく様子は、まるで、トーナメント戦を勝ち進むスポーツ選手のよう。随所に散りばめられた策略や駆け引きにハラハラしたり、舞踏会の再開に涙したりと、ロマンティックなだけじゃない充実した121分が味わえます。
劇場で公開された時は残念ながらヒットしなかったのですが、愛の力のすごさを実感させてくれるとても印象に残る作品です。きっと「私もこれぐらい愛してみたい」という気持ちになれるはずです。
作品開始から10分くらいのところで、父の死に直面した子役のダニエルが、「パパーッ!」と叫ぶシーンがあります。ダニエルの表情にフォーカスを合わせたまま、背景だけが劇的に動いているように見えることに注意して観て下さい。このような手法を逆ズームといい、カメラ自体は被写体からどんどん離しつつ、被写体の大きさは一定になるように、レンズでズームし続けるという大変高度な撮影技術です。
「だからなによ」って言われても困りますが、知ってるとちょっと面白いでしょ?
ではまた。
1998/アメリカ/121min
監督:アンディ・テナント
配給:20世紀FOX
次回の「今夜はこれを借りて帰ろう」は11月17日アップ予定です。
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