元ピンサロ嬢の３０分ガチンコ勝負
【第47話】寡黙戦争勃発！
無口なお客さんって困りますよね。
特にお水だと会話するかお酒作るしかやることないから、もう脳内大警報ですよ。
もともと会話上手な方じゃないんで、ありとあらゆる引き出し開けてトピック総動員。
私「さっ、最近サッカー盛り上がってますね！試合見てますか？」
客「見てるよー」
私「みんな深夜でも頑張って応援してますよね！」
客「夜遅いのは見ないかなー」
（シーン）
お前さっき見てるって言ったじゃん！
「やべーひろがんねー！！」って焦ってると、若い脳内二等兵が、
「申し訳ありません！サッカーの引き出しを全て開けましたが、わずかなＪリーグの知識しか入っていませんでした！！」
って報告してくるわけですよ。そうすると、非情な脳内少尉は、
「出せるもんは全部出せ！」
とか言うんですね。
私「サッカー選手といえば、昔アルシンドっていましたよね！！」
客「いたね～」
（シーン）
私「今何してるんですかね！」
客「ねー」
（シーン）
いっそ死なせてくれ！みたいな心境ですよ。
まあ、これは完全に私が悪いけど。ちょっとおもしろなキーワードに頼ったおかげで一個小隊全滅させたけど。
これが風俗だと、会話が続かなくても「じゃ、そろそろ…」とか言って「とりあえず抜いとけ」みたいな空気になるから楽なんですけどね。
ただ、ピンサロ時代の常連客・ヤスさん（40代くらい）は、そうはいかなかった。
ヤスさん、チョー寡黙（かもく）なくせに抜こうとすると「まだいいよ」って言うんですよ。
会話続かないんだから、せめて抜かせてよ！！
って叫びたいけど、もちろん言えない。
早漏だし回復が遅いから、ギリギリまでサービスは受けたくないとのこと。
その気持ちはわかるけど、ヤスさんのおかげで脳内兵士たちが何人玉砕したと思ってんの！
しかし、ある日のこと。
話題がなさすぎてなんとなくヤスさんのスマホを覗いてみたら、ゲームのアプリがたくさん入ってることに気がついた。
私「ゲームたくさん落としてますね！」
ヤ「無料のだけ…」
私「無料のアプリでおすすめあったら教えてください！」
ヤ「じゃあこれとか…」
ヤスさんが（相槌（あいづち）以外の言葉を）（能動的に）喋った！！
やっと突破口みつけたぞ！！と、脳内兵士たちも泣いて抱き合っていたんですが、
私「これどうやって操作するんですか！？」
ヤ（無言でルール解説を開く）
私（ゲームに集中）
ヤ「…」
私「…」
（シーン）
「おすすめのゲーム教えて」作戦すら、惨敗でありました。
その後も、ヤスさんが来た時は必ず「総員、第一種戦闘配置！」の脳内アナウンスが響き渡り、厳戒態勢で臨みました（そして全敗でした）
永田王（ながたおう）
ＯＬ・風俗嬢を経て現在はライター業やトークイベントなどで活躍中。
