幸せってなんだっけ?
センター街を突っ走った夜
そもそも、ハゲは不幸であり悲劇であり喜劇である。
浪花のモーツアルトことキダタロウや小倉智昭に美川憲一。
毛さえあればフェイクを着用せずに済んだはずである。
私は小倉智昭がスポーツ観戦の時、帽子を被っている姿を目にする度に
余計な心配事で胸がドキドキハラハラしてしまう。
だって生理二日目でも無いのに二枚重ねだから。
帽子を取る時にもう一つの帽子が取れたら洒落にならないから。
私自身、ハゲは嫌いではない。
どちらかと言えば、いける口である。
だが、ハゲを隠そうとする行為に萎えてしまうのだ。
横や後ろの髪の毛を無理矢理、前の方に持ってくる様に切なさを感じる。
無茶苦茶な人は七三分けどころか一九分けになっているし。
実際、私はハゲに萎えたことがある。
ある男性と恋仲になりデートを重ねたのだが、
ニット帽を取った姿を見たことがなかった。
帽子を取らないのはお洒落さんだからだと思っていた。
しかし、ある日のこと。
渋谷でニット帽の彼と酒を飲みベロベロに酔った私は
「ねぇーその帽子被らせて?!」
と言い、彼の帽子を奪い取った瞬間、時が止まった。
そう、彼は温水洋一風のハゲだったのである。
びっくりした私はニット帽を握りしめたまま、
センター街を突っ走り、家に帰ってしまった。
それから彼とは音信不通。
今思うと、ニット帽だけでも返してあげればよかったと後悔している。
私がハゲを切なく思うのはきっとそんな過去があるからなんだろうな。
次回の「幸せってなんだっけ?」は9月10日アップの予定です。
ひらこもえ
1976年東京生まれ。舞台芸術学院卒業後、女優の末席にもぐり込む。
末席に位置したまま静かーに女優を廃業し、物書きに転身。著書にお腹がよじれるネタ満載のエッセイ集「ドロップス」(日本文学館)がある。




















