高校を卒業してからずっと一人暮らしをしているヒトミちゃん。
独身生活も長いというのに、料理はおろか、掃除も洗濯もゴミの分別もからっきしダメ。
食事はコンビニと外食でなんとかなるからいいけれど、
一番嫌いなのがゴミ出し。というか、その前の分別ができないのだ。
以前、燃えるゴミにカップ麺の容器を入れたら、町内会のおばさんにチェックされ、出したはずのゴミを玄関先に放置されたことがある。
そのショックが思いのほか大きく、以来、ヒトミちゃんはゴミ出しができなくなってしまった。放置しているうちにゴミの日も忘れてしまったので、部屋の中はゴミだらけ。
お風呂もトイレも、ここのところ自分で掃除した記憶がない。
でも、お金に余裕のあるヒトミちゃんはへっちゃらだ。
というのも、2週間に1度、ハウスキーピングの人に来てもらっているから。
プロのワザはすばらしい。ゴミため同然の部屋の中が、半日もすればピッカピカ。長年やってもらっている人なので、洗濯物の片付けはもちろん、ヒトミちゃんの持ち物にも熟知していて、散乱した小物も、絶妙な位置にキッチリ整理してくれる。
「家事なんかできなくても、お金があれば快適な暮らしができるのよ」
綺麗になった部屋で、ヒトミちゃんはひとり高笑い。
そんなカラクリがあるとは知らないヒトミちゃんの友達は、ヒトミちゃんの部屋に行くたびに感心する。
「ヒトミちゃんはいい奥さんになれるね」
「ヒトミちゃんはホント、きれい好きだよね」
数々の賛辞を聞きながら、ヒトミちゃんはニンマリ。
そんなヒトミちゃんに、ちょっと本気モードの彼氏ができた。
相手は意外にも、お堅い会社のサラリーマン。
真面目を絵に描いたような人だった。
だからヒトミちゃんはなかなか彼氏を部屋には呼ばなかった。
こういうタイプは、一度入室を許すと、呼ばなくてもやって来るようになるのだ。
掃除前の"汚部屋"最強レベルの時に訪問されてはたまらない。
そのかわり、ヒトミちゃんは先手必勝とばかり、彼氏の部屋に行くようになった。こっちから攻めていけば、弱みを握られることはない。
当然のことながら、一緒に部屋にいる時間が長くなると、男の要求はエスカレートしてくる。エッチの事ではなく、家事のこと。
さすがにいきなり掃除をしろとは言わないけれど、
「ヒトミちゃんの手料理が食べたいな」と言うのは自然の成り行き。
やべぇ、キターーー!!!
「簡単なものでいいから、ヒトミちゃんの料理が食べたいな」
「う、う……ん」
簡単なもの、って、何が簡単なのかさえもわからないヒトミちゃんには、お茶漬けだってハードルが高い。
「私も外食が多くて、あんまり料理はしないんだけど……」
「いいよ。簡単なもので。ウチにはあんまり材料がないから、買い物でも行く?」
女は料理ができて当たり前と信じて疑わない男を前に、ヒトミちゃんは固まった。一緒に買い物なんかに行った日にゃあ、料理のリの字も知らないのがバレてしまう。ここは何とか踏ん張りたい。嘘をついても手に入れたい男なのだ。
う~ん、どうしよう……。
苦肉の策でヒトミちゃんは思いついた。
「トシちゃんは部屋を掃除しておいてよ。その間に私、買い物してくる」
一人で買い物に行けば、できあいの総菜を買ってきてもバレるまい。
しかし、家庭料理のなんたるかを知らないヒトミちゃんは、ありえない手の込んだ総菜を買ってきてしまうのだ。
そしてその結果は……。もちろんバレバレで、あきれた彼氏は遠くへ行ってしまいましたとさ。(悲)
次回の「お金はあるのに何故買えない!?」は3月3日アップの予定です。
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