お金はあるのに何故買えない!?

メタボは商売道具なのに……

巨漢シズカちゃんの悩み

シズカちゃんは身長160cm、体重120kgのふくよかな女の子。
その方面がお好きな紳士が集まるお店では人気ナンバーワン。
シズカちゃんが人気なのは、キュートな容姿だけじゃない。
茶目っ気たっぷりの話術に旺盛な食欲が、お客さんには大人気なのだ。
シズカちゃんの食べっぷりを一目見ようと、
彼女のテーブルはいつもお祭り騒ぎになる。

「食べるのを売りにしているわけではないのに……」

シズカちゃんとしては、自分が食べるよりも、
お客さんに飲んでもらったほうが嬉しいのに、
シズカちゃんを指名するお客さんは大量の料理をお土産に持ってきて、
シズカちゃんのフードファイトを楽しみにしている。
だからシズカちゃんは、それを全部、
喜んで平らげなければならないのだ。
お店でたっぷりご飯が食べられるから、ありがたいけれど……。
実はシズカちゃん、このお店に来て「大食い」を売りにするようになってから、あっという間に20kg増えた。
そういう女性ばかりのお店だから気にはならないし、
店長にはもっと太れと言われているからそれに答えようと思うのだけど、
ものすごいスピードで洋服のサイズが合わなくなるのはちょぴり問題。
プライベートでおしゃれができないなんて、
お年頃の乙女としてはけっこう悲しい。

「大きなサイズって、かわいいデザインのが少ないよね」
「そうそう、靴も、地味なのばっかり」

お店の控え室での会話は、いつもこんな愚痴ばかり。

「伊勢丹に大きなサイズのお店があるよ」
「私、そこでもサイズの合うのがなかった」

店一番の体重を誇るユリエねぇさんが苦笑いをした。
シズカちゃんがユリエねぇさんのようになるのも間近に思える。

「どんなに高くたっていいから、かわいい服を着てみたいな……」

シズカちゃんは思わずため息をついてしまう。

「痩せなさい」と言われても……

ファッションのことで悩んでいたシズカちゃんに、
青天の霹靂ともいえる大問題が浮上したのは、
それから間もなくのことだった。
お店の方針で内科検診をしたときのこと。
シズカちゃんにはメタボに関するイエローランプが点ったのだ。

「糖尿病の兆しが見えますね。
これ以上太るのは、命を縮めることになりますよ」
「はい?」

太っているから仕事ができているのだ。今さら痩せられるわけがない。
それに、自分がモリモリ食べるから、お客さんも来てくれるというのに……。
どうすればいい?

「仕事の関係で、痩せるわけにはいかないんです。
薬で何とかなりませんか?」

シズカちゃんが言うと、医師はあきれたようにシズカちゃんを見て言った。

「薬を飲んでも、痩せなければ病気はよくなりません。
炭水化物を減らして、食事療法をしてください。
そうしないと、糖尿病は怖いですよ。
目が見えなくなったり、足が腐ってしまうこともあるんです」

えー!?
どんなにお金を出してもいい。
かわいい洋服のことなんか、この際どうでもいい。
太ったままで病気を治す方法を教えて!

「だから、この病気を治すには、痩せるしかないんですよ」

医師はがんとして「痩せろ」を連発する。そして最後に一言、

「死んでもいいんですか?」

うー……。と、いうことは、私にお店を辞めろと?

「お仕事のことは関知しません。
命が大事か、仕事が大事か、よく考えてください」

医師は最後通告を出してシズカちゃんを見限った。
食べちゃダメなんて、痩せろだなんて、仕事をするなと言うことじゃない。
でも、そうしないと私は死ぬかも……。
シズカちゃんは今、究極の選択を迫られている。

次回は3月17日アップの予定です。

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