小金を貯めて、あこがれのバリへでかけたヨシミちゃん。
ちょっと豪華なパックなので、ホテルも良い感じ。
ここでゆったり1週間、エステ三昧の日々を送るのだ。
パックとはいえ終日フリーで、
現地ガイドが付くのは到着日と帰国日だけ。
後は好きなようにしてね、というものだから、
ヨシミちゃん、なんとなくドキドキ。
というのも、ヨシミちゃんは、バリ語はおろか、
英語も満足に話せないのだ。
エステの予約は日本でしてきたから何も問題はないけれど、
何かトラブルが起こったらどうしよう、と思わないではなかった。
で、到着早々、そのトラブルが発生した。
問題は部屋の中。バスルームの電球が切れていたのだ。
部屋を案内されて、ベルボーイが帰ってから気付いたので、
事の次第をフロントに伝えなければならない。
でも、何て言ったらいいのか……。
「電気が壊れているんだから、ライト、クラッシュ?」
しっちゃかめっちゃかの単語を並べて電話をすると、
ほどなくして係の人が来てくれたけど……。
やってきたのは工事業者の人と、血相を変えたホテルの人。
手には大きな救急箱を抱えて、なんだかものものしい。
電球を変えるだけなのに……と思っていたら、
ホテルの人がヨシミちゃんの肩を掴んで、
「アー ユー オーライト!?」
と焦っている。
どうやらホテルの人は、ヨシミちゃんの説明を、
「電気が破裂して大変だ」と受け取ったらしい。
そんなことなら怪我もするんじゃないかと、すっ飛んできたというわけだ。
ちょっと恥ずかしい思いをしたヨシミちゃんだったが、
そこはご愛敬。気を取り直して食事に行った。
すると、そこでも問題発生。まず、メニューが読めない。
材料はわかるけれど、どんな料理なのか、皆目見当が付かない。
適当に頼んだら、オードブルばかりが来てしまった。
せっかくのバリで、けっこう痛い思いをしたヨシミちゃん。
海外旅行をするなら、やっぱり英語くらいは覚えておかないとね。
ということで、ヨシミちゃんは英会話教室に行くことにした。
けれど、予約の時間にいつも遅刻。
ひどいときには黙ってすっぽかしもした。
どうして行けないのかというと、
仕事が終わると飲みに行っちゃうヨシミちゃんは、深酒をして、
どうしても約束の時間前に起きられないのだ。
問題はヨシミちゃんのやる気の弱さなのだけれど、
こればっかりは本人次第なので、
英会話の先生がどんなに言っても直らなかった。
まぁ、のど元過ぎれば何とやらで、
「英語ができなくても、お金を払って通訳を頼めばいいんじゃん」
ってな感じになってしまったのも、足が遠のく原因に。
では、その通訳は頼めるのかというと、
旅行先ではそう簡単に見つかるものではないし、
下手をすれば騙されて終わりだ。
結局は自分で何とかしなきゃいけないのだ。
それでもヨシミちゃんのやる気は出ない。
やろうという気持ちはあるのだけど、まだそれほど危険な目に
あったことがないから、緊迫感がないのだ。
その日になると、
眠い目をこすってまで出かけるのが面倒になってしまう。
「そんなことでは、いつまでたっても英語は身に付きませんよ」
英会話学校の先生の厳しい言葉にも、「へいへい」と返事はするものの、
明日になればやっぱりワガママが先に立つ。
せっかくお金を出して勉強しようと思い立っても、
その実態は一種のファッション感覚。
「私、英語を勉強してるの」ということだけで満足しちゃって、
なかなか実にならない。
もっとも、英語に限らず、こんなことは、ヨシミちゃんには山のようにある。
何十万もお金を払ってもったいない。
お金だけで英語が話せたら、苦労はしないのにね。
次回は4月7日アップの予定です。

2008.3.27発売
『それって、立派な「うつ」ですよ-自分を責める人たちの処方箋-』
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著者:安部結貴
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