キャバクラ勤めも3年目のレイナちゃん。
順調に売り上げを伸ばしているから、
そんじょそこらのリーマンなんか
足元にも及ばない年収を稼ぎ出している。
「そういえばー、
私より年収の多い人に出会ったことないのよね、私」
というあたりから、ちょっと男を舐めているかも知れない。
でも、実際の話、お店に来るのはデレンとした男ばかり。
そんなお客に適当な受け答えをして金が稼げるのだから、
男を見下すようになっても仕方がない。
「あたしってー、そこそこ学歴もあるからー、
相手もそれ相応じゃないとねー」
というとおり、実はレイナちゃん、国立大卒の学歴の持ち主なのだ。
高学歴・高収入のレイナちゃんから見れば、
お店に来るのはクズばかり。
適当にあしらって、はい、さようなら、な毎日なわけだ。
でも、レイナちゃん、この頃ちょっと困っている。
見た目ニートな客が、レイナちゃんにぞっこんになり、
どこから金を出すのか、
同伴はするは、高額のボトルは入れるは、アフターはするは……。
正直、鬱陶しいわけだけど、これも大事なお客さんと思えば、
ないがしろにもできない。
「なんかぁ、あんな奴の相手するくらいだったらぁ
、
私、この仕事、もういいかなぁ、って思い始めたよ」
なんと、客層が気にくわないから店を辞めるとな?
まぁ、それも、どこに行っても通用するという
容姿と若さを持っているからいえることなんだけどね。
おまけにお年頃でもあるわけだから、
少しはいい人いないかな、と思わないではない今日この頃。
お店の客は問題外として、
プライベートを充実させたいと思っているレイナちゃんにしてみれば、
今の状況はストレス溜まりまくり。
本気で転職も考え始めようと思っているのでした。
「とはいえ、会社にお勤めしたことがないから、大丈夫かな?」
と思っているところに、エンジェルのようなお客さんがやってきた。
都心部にいくつかの飲食店を展開している青年実業家。
独身で、現在、秘書を募集中。
「レイナちゃんのような秘書がいてくれたら、毎日が夢心地だよ」
お客の言葉を鵜呑みにしないのが、
この業界のセオリーではあるけれど、
この時のレイナちゃんには思いっきりストライク。思わず仕事を忘れて、
「実は私、別のお勤めも考えているんです」
といってしまっていた。
クールなレイナちゃんには珍しい言動だったけど、
気持ちは半分本気だった。
この人の元で働けたら……。本当にそう思ってしまっていたのだ。
だけど次の瞬間。
「堅気の仕事は厳しいよ。ここにいる娘には無理だろうな」
青年実業家の厳しい意見がレイナちゃんの胸に刺さった。
「実は私、○○大学卒なんです」
「え? 国立じゃん」
「ええ、そうなの」
下心いっぱいのレイナちゃんが本性をむき出す。
この機会に華麗な転職を目指すのだ。
「容姿端麗、学歴も問題ない、と……」
青年実業家は打って変わって、
舐めるようにレイナちゃんを品定めし始めた。
しめしめ。これで私もビジネスレディよ。
そう思った矢先。青年実業家は何やらメモをこっそりと渡してきた。
「これでどう?」
そこには近くのホテルの名前とルームナンバー、
そして10万円の文字が……。
その意味を悟ったレイナちゃん、
わなわなと震えて青年実業家を睨むと、
やにわに席を立った。
「ふざけんじゃないわよっ! 誰が身体なんか売るものですか!」
金なんか、掃いて捨てるほどあるというのに、
金で動く女と見られた自分が悔しい。
思ったように世の中は動かない。
誰よりもプライドの高いレイナちゃんでありました。
次回は4月21日アップの予定です。

2008.3.27発売
『それって、立派な「うつ」ですよ-自分を責める人たちの処方箋-』
(実業之日本社 1365円)
著者:安部結貴
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