レイカちゃんは、とある会社のテレホンアポインター。
日々、営業の電話をかけまくっている。
でも、困ったことがある。
何かというと、いつも第一声では男性に間違えられてしまうのだ。
とはいえ、声が男性であろうと女性であろうと、
用件が伝わればいいのだから、そんなことは問題じゃない。
実際、レイカちゃんの営業成績はけっこう良くて、
丁寧な電話応対には定評がある。
新人研修などでも、レイカちゃんは先輩として
講義を行ったりもしているので、上司の評価も上々だ。
「はい、皆さん。ベストな電話応対とはどういうものか、
先輩のやり方を見てみましょう」
そう言ってモデルになるのは、いつも決まってレイカちゃん。
いろんな会社の商品を一手に引き受け、
営業の電話を代行でかけるこの会社にとって、
レイカちゃんのような優秀な営業マンはかなり貴重。
実際、レイカちゃんには売れないものは無いとまで言われているのだ。
「どうしたら、そんなにすらすらトークが出てくるの?」
同僚は、レイカちゃんの立て板に水のトークに舌を巻く。
「そんなに大したことないよ。普通に、誠意を込めて話しているだけ」
性格も控え目なレイカちゃんは、同僚のウケも良い。
「私にもその営業トーク教えて」
新しい商品が来るたびに、同僚はレイカちゃんに教えを請う。
レイカちゃんは嫌な顔一つしないで、丁寧に説明をして、
控えめながら自分の意見も入れてみる。
そんな姿に上司もご満悦、ではあったのだけど、
どうも最近、レイカちゃんの調子が悪くなってきた。
思ったように営業ができないのだ。
理由として思い当たるのは、
主婦に向けた商品の売り上げがイマイチということなのだけど……。
じっくり話をして、女性の心をくすぐる営業をしなければならないのだけど、
その調子が俄然悪くなってきた。
最近は、商品名を出した途端に、
「結構です!」
と切られてしまう。
何が悪いのだろう?
営業成績が給与に繁栄するわけではないから、
売れても売れなくても自分的には関係ないのだけど、
やっぱり成績が伸びないと、仕事をするモチベーションに影響が出る。
密かにレイカちゃん自身も気にし始めるようになった。
そんな時、上司でもあり、トレーナーでもある人から、
レイカちゃんは呼び出された。
「最近、調子が悪いんですって?」
「ええ、まぁ……」
「これはね、実は前々から感じていたことなんだけど……」
「はい」
「あなた、声が、悪いのよね」
「は?」
「うん、つまり、どうしてもドスの効いた男性の声だから、
そのだみ声で、女性言葉を使うとギャップが……。
だから、今回の商品はちょっと無理かと……。
ほら、やっぱり電話は声の印象が大事じゃない?」
「そうはいっても……」
「そうなのよね。今回のものに限らず、うちでは今後、
女性向け商品に力を入れていこうとしているから、
正直、あなたの声はちょっと……」
「はぁ……」
ということで、レイカちゃんはなんと、
テレホンアポインターを引退させられてしまった。
レイカちゃんのテクニックは追々、他の人に教えていくとして、
レイカちゃん自身は表に出ない管理業務に移動させられてしまったのだ。
結果的には栄転ではあるのだけど、レイカちゃんとしては納得できない。
でも、こればかりはどうしようもなかった。
体や顔は整形できるけど、
声だけは、どんなにお金をかけても治せないのだ。
なんとなく殺伐とした気分のレイカちゃんであった。
次回は6月16日アップの予定です。

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