恋の花びら大回転

【第94話】催眠術に挑戦! その3
そんなわけで、私が催眠術にかかっていると信じ込んで、やりたい放題の自称・催眠術師のNさん。Nさんの茶番に付き合ってあげていたものの、だんだんと不安になってきました。
それは、調子に乗って「生でセックスしたくなる」「中出しされたくなる」などと言い出すのではないか?という心配です。催眠術系のエロ漫画やAVって、必ず女がセックス狂になって、最後は「中にいっぱい出して~っ」なんて言い出しますよね。「ゴムつけて~」とはまず言わない。まあ、催眠術系じゃなくても言わないけど。
残念ながら、それだけはできません。もしもそんな催眠術をかけ始めたら、どうやって断ろう…と頭を巡らせていました。鼻に指を入れられながら。
しかし、Nさんはさっきから、「エッチな気持ちになる」「イチャイチャしたくなる」など、受け身な内容の催眠術しかかけてこないし、自分からは私に触ろうとすらしません。
なんとなくいい雰囲気になって、今にもキスしそうな距離になると、
「ハ、ハイッ3、2、1!!!あなたは僕に本名を教えたくなる!」
と、またしょうもない催眠術が始まってしまいます(本名は教えました)。
もしかしたらNさんは物凄く怖がりで、臆病なのかもしれません。相手を100%コントロールできる立場にないと、不安で仕方がないのかも。
自称・催眠術師のくせに、全然エロいことをしないので、逆に、「そんな催眠術をかけなくたって、私はさっきからずっとムラムラしてるんだよ馬鹿野郎!」と、私の方がイライラし始めてしまいました。
仕方なく、「なんか、エッチな気持ちになってきちゃった…☆」という催眠術の常套句でNさんに襲いかかり、あんなことやこんなことなどして、たくさんイチャイチャさせていただきました。ありがとう、催眠術!
事前にNさんが説明していたような、「全身が敏感になって、感度が何倍にも上がる!」なんて事態にはもちろんならなかったけど、まあそれなりに楽しかったです。
ハグしながら、
「3つ数えたら、君は僕のことを好きになってる」
「君は僕をどんどん好きになる」
と、私に何度も何度も暗示をかけるNさん。その姿を見た私は、可愛いと思いつつ、なんだか切なくなってきました。そういう気持ちは、無理矢理植え付けられるものじゃないのに…。彼が一生懸命催眠術をかけるたびに、同情し始めていました。
今回で完結するはずでしたが、なんとまだ続きます!

藍川じゅん
元ピンサロ嬢。アダルト誌にてコラム連載中。著書『大好きだって言ってんじゃん』(メディアファクトリー)が好評発売中!