恋の花びら大回転
【第59話】耳の遠い男
私の大好きな小説(ここで名前を出すのも憚れるくらい好き)に
「耳の遠い女は口説けない」という一節があります。
主人公の男が、「嫌いなタイプの女は?」と聞かれて
「耳の遠い女(あと、すぐ「冷房強すぎ」ってツイッターで呟く女と、麻雀できるかどうか聞かれて「ドンジャラなら」って言う女)」と答えるんですが、
その理由は
「冗談を言ってもいちいち『ん?』と聞き直してくるので、
同じことを二度言わなくちゃいけなくて苦痛だから」
いるいる。男でもいる。風俗やキャバクラのお客さんにもいる。
今ここ聞いて欲しい!ってポイントを必ず聞き逃す人。
早く帰りたくて上の空になってるなら、
まあ仕方ないんですが、話聞いてないわりにまた指名してくれたりする。
なので、頑張って話すんだけど、やっぱり肝心なところで
「えっ?」って聞き返される。ンモー!
わざとじゃないのに耳が遠いお客さんは、
「緊張しすぎている」か、あるいは「自分のことを考えている」場合が多い。
緊張してるだけなら、何度か会って慣れれば問題ないけど、
自分のことばかり考えてる人はいつまでたっても話を聞いてくれません。
常に「楽しく会話してる俺!」とウットリしているか
「なにか気の利いたことを言って、すごいと思われたい!」と、
別のことを考えてるので、相手の話に全然集中してない。自意識過剰なんですね。
こういうお客さんには、うわべだけの会話で
楽しそうな雰囲気を演出しましょう。
一生懸命盛り上げる必要はありません。
「風俗やキャバクラで女の子と会話を楽しめてる俺!」
にしか興味ないので、誰が何の話をしていてもどうせ聞いてないですから。
わたくし事で恐縮ですが、以前付き合った男性は、
セックス中に耳が遠くなるタイプでした。
私が、「あーん、私の○○○な○○に○の○○○が○○ちゃってる??!」
みたいなことを口走るたびに「えっなに?」と、聞き返される。
恥ずかしいことを何度も言わせて盛り上がるプレイとかではなく、
素で「え、今なんか言った?」と聞かれてしまうので
「あ、なんでもないです…すみませんでした」
とテンション爆下がり。
まあ、この場合は耳が遠いんじゃなくて、
射精するのに一生懸命なだけだったけど。
すみませんね、集中してる時に1人でワーワー騒いで!
どうせ聞こえてないんだったら
笛吹いたりタンバリン叩いたりして射精の応援すればよかった。
ちなみに、私も耳が遠いです。私の場合は、ダジャレが聞こえない。
ダジャレを言われても、とっさに何と何がかかっているのかわからず、
ポカーンとして「えっ?」と聞き返してしまう。
なので、友達やお客さんたちから
「ダジャレの説明をさせるな!」とよく怒られています。
このように、耳が遠い人には「緊張してる」
「自分のことばかり考えてる」だけでなく、
「頭が悪くて話を理解できない」というパターンもあるので、
あんまりにもポカーンとして話を聞いてない時には
「あっ、この人馬鹿なんだな…」と思って優しくしてあげて下さい。
藍川じゅん
元ピンサロ嬢。アダルト誌にてコラム連載中。著書『大好きだって言ってんじゃん』(メディアファクトリー)が好評発売中!