恋の花びら大回転

【第7話】ホステスvs寡黙おじさん
ホステスに転身し、夜な夜な初老紳士たちとの秘密の疑似恋愛を楽しんでおります。
ウフフ!キャバレーだから花びらは回転しないけど!
とはいえ、華やかな大人の世界ですから、やっぱり楽しいことばかりじゃない。
こないだフリーのお客さんについた。50代前半くらいで、こっちが10喋るとやっと1か2ポツポツ返すような寡黙な方でした。
寡黙っつーか、私と話したくなかっただけなのかもしれないけど。
わかる、わかるよその気持ち。「新人でーす」とか言ってブスのデブに席つかれたらそりゃムッとするよね。そんで「こういうの慣れてないんですー」とか言うの。ブスが。
殴りたくなるそのお気持ち、よーくわかります。
でもさあ、それなら店入る時点で写真指名するなり黒服にチップ渡してフリーだけど可愛い子つけてねってお願いしたり、地雷を避ける手はいくらでもあるわけですよ。
最低料金しか払わないくせに自分で楽しむ努力しなさ過ぎじゃねーの?
「じゃあ黙って聞いてるんでー、なんか楽しい話して盛り上げておいて下さーい」
って態度だと、「●んちん抜いてやるからさっさと帰って寝ろ」みたいな気持ちになるわクソが。
仕方ないので、とりとめのない話を一方的にワーッと話した。
こんなクソつまんねー話聞かされるくらいなら黙っててもらった方がマシっていういやがらせレベルのやつをノンストップで。やたら楽しげに。
そしたら、寡黙なお客さんが急に「…どこ住んでんの?」って聞いてきた。
キタキター!
さっきから私ずーっと壁に向かって剛速球投げてたよ!
やっとキャッチボールできるよ!
「○○です!」って答えたら、「家賃いくら?」。
やっと口開いたと思ったらいきなりそこ聞くの!?
私「○○円ですけど…」
客「引っ越しの費用○○万くらいかかった?」
私「ええ、まあ、そのくらいですね…」
客「じゃあ、貯金は結構あったんだ」
この人なんでさっきからお金の話ばっかしてんの!?
野球だと思ってバット持って待ち構えてたらラグビーのボール飛んできたみたいな驚きですよ。
さっきまで張り切って喋ってたのに、一気にトーンダウン。
その後も、「ここの時給いくら?」「毎月いくら稼ぎたいの?」とお金のことばっかり聞かれて、
「入ったばっかりなんでわかりませ~ん」
って適当な返事して、後は上の空でお見送りまで時間を潰しました。
てっきりブスの新人がついてご機嫌ななめなのかと思って気遣って接客しちゃったけど、ただのコミュニケーション能力皆無のモテないおじさんだったわ。
頑張ってマジで損したわ。
今度からいい歳してお金の話ばっかりしてるおじさんがいたら、「さぞ●んちんが小さいんだろうなー」って勝手に同情してイライラを緩和することにします。

藍川じゅん
元ピンサロ嬢。アダルト誌にてコラム連載中。著書『大好きだって言ってんじゃん』(メディアファクトリー)が好評発売中!