恋の花びら大回転

【第8話】恋する乙女おじさん
藍川じゅん、絶賛疑似恋愛中。
さっそく大●まこと似の髭の似合うダンディなおじさま(50代後半)と仲良しになりました。キャッ。
まことさん(仮名)からメールがくるたびに嬉しくてポワワ~ンとしてます。
おはようございます
今朝は早起きですね!
いい夢でも見ましたか?
ってメールをくれたりする。
こんな品のいいメールもらったことねえよ!
私の周りの男っていったら「朝勃ちしちゃったwww」みたいなのばっかりなのに!それはそれで嬉しいけど!
それにしても、遊び慣れてる昭和のお父さんたちって、優しくてガツガツしてなくて、家庭があるから遊び方もスマートですね。
お●んちんの硬度が下がると、反比例して大人の余裕が増すのかしら。
クラブじゃなくてわざわざキャバレーに来るところも隙があってイイネ!
しかしながら、恋に恋しちゃうタイプの乙女なおじさまもやっぱりいる。
甘えんぼで、たいてい独身。他の指名客にヤキモチ焼いたり、メールがチャット並みに送られてきたり、返信が遅いとふてくされたりと、可愛いっちゃ可愛いけど面倒っちゃ面倒。
あと、情熱的過ぎてちょっと怖い。
先日ついた田中さん(仮名)も、50代独身男性で私が隣につくなり場内指名してくれた乙女なおじさま。約2時間ずーっと「こんな可愛い子初めて見た!」「一目ぼれした!」「愛してる!」ってアリーナ席かってくらいボルテージ最高潮。
こんな商売始めましたけど、自分の顔の造形は平均かそれ以下だし体と顔のでかさに至っては全盛期のパパイヤ鈴木並みってことはよくわかってますので、そんな大げさな愛の言葉をささやかれるとまず「何言ってんだこいつ」って言ってる時のやる夫みたいな顔になっちゃうわけですよ。
あと、私の乏しい男性経験から得た教訓として「早い段階で愛してるって言い出す男は絶対に信用するな」というのがありまして、まんまと警戒してしまった。
その後もラブメールがバンバン届いて、すぐ本指名でお店にも来てくれたので、たぶん誰かに好きって言いたいだけの人なんだな、と。
とりあえず誰とでもいいから恋してる気分になって、忙しい仕事や日々の生活を一瞬でも忘れたいのかもしれない。
そういう人たちの需要に効率よくお答えするのが、このお仕事なのね。ほんとに水商売ってよくできたシステムだよなあ。
警戒しちゃってごめんね☆ 疑似恋愛で恐縮ですが、お店にいる間だけはラブラブしましょうね☆って気持ちで田中さんとイチャイチャしていたらですね、たまたま携帯のメールの画面が開きっぱなしになっていたんですよ。
ふと見たら、私の名前の登録が
「田中じゅん」
になってた。
なんで勝手に自分の苗字つけてんのー!!!
やっぱり怖いよ乙女おじさん!!

藍川じゅん
元ピンサロ嬢。アダルト誌にてコラム連載中。著書『大好きだって言ってんじゃん』(メディアファクトリー)が好評発売中!