風俗嬢チエの風俗嬢ってどないやねん！！
明日は我が身【1】
うちの店に新人さんが入ってきはった。
「ゆうかちゃん」22歳。1児の母。
友だちに紹介されて、入ってきた、「風俗未経験」の子やった。
風俗どころか、キャバクラすら行ったこともない、
結婚してからは、パートに出たこともない、
本当に「箱入り主婦」の、風俗デビューや。
……なぜにイキナリ「風俗」か？？
いささか疑問やった。
疑問というより、「だいじょうぶなのか？」という心配の方がでかかった。
まぁ、チエもお水未経験で、
最初から風俗の世界に入ってきたタイプやから、
人のことはとやかく言えへん。
十分チャレンジャーな立場なんやけど。
その「ゆうかちゃん」は、なんていうか、すごくおとなしい子で、
風俗に対して、ものすごく恐がってる雰囲気が最初からただよってたんや。
それでもここに来たということは、
よほどの理由があったんやろうな。
それは聞くまいと思い、
初めての世界に戸惑いつつも、
仕事内容を覚えようと頑張っているこの子に、
チエは出来るだけのことをしてやろうと思ったんや。
サービス内容。お客さんへの接し方。
初めての緊張を、どうやってほぐすか。
嫌なお客さんはどうやって交わすか。
「風俗」にある程度偏見を持って入ってきているのは
なんとなくわかったから、
それを上手に汲み取って話すことも忘れないようにした。
「みんな平気でなんてやってへんよ。
それなりに耐えて頑張ってる、普通の子たちばかりや。
でも、みんな何かのために頑張ってる、
ゆうかちゃんと同じ子たちなんやで」
ゆうかちゃんの不安や迷いが、どうすればほぐれるのか、
チエには手に取るように分かった。
なぜなら、生まれて初めて風俗の世界に入った日の自分と
まったく同じモノを感じたからや。
話せば話すほど、ゆうかちゃんの緊張にこわばった顔は、
少しづつゆるまっていき、
チエは無性にゆうかちゃんがかわいく思えた。
でも、ひとつだけ、チエでは拭い取れないものがその子にはあったんや。
「旦那さんへの罪悪感」……。
ゆうかちゃんのこころの中は、コレが一番大きかった。
でも、それはチエでは何ともしてやれない。
チエ自身だって
いまだにソレと戦いながら、この仕事を続けているからや。
自分で乗り越えるしかないんや。この世界で働くのなら。
それだけ、お金が必要だというのならば。
ゆうかちゃんは、ビデオ講習を終え、
次にお客さんが来店したらサービスに付く、というところまで来た時には、
再び極限状態まで緊張してしまっていた。
「だいじょうぶやで。お客さんかって、初めてやって知ったら、
上手く出来なくても怒らへんし、
逆に一生懸命さが喜ばれることも多いから、
とにかく笑顔でおったらええよ！」
チエはゆうかちゃんが落ち着けそうなセリフを、かけるだけかけた。
お客さんが来店され、
ゆうかちゃんは泣きそうな顔をしながら、
サービスルームへと向かっていった。
チエは後ろ髪を引かれる思いで、ゆうかちゃんを見送りはしたが、
心配でしょうがなかった。
だいじょうぶやろか……
途中で泣き出したりせんやろか……
テンパって、自信なくしてしまうんやないやろか……
まるで妹の身を案じるかのような心境で、
チエはハラハラしながら待った。
次回の「風俗嬢ってどないやねん」は4月24日アップの予定です。
チエ
23歳の風俗3ねんせい。一緒に暮らしている彼にばれることなく仕事を続け、ガッポリためこんでいる大阪・ミナミの風俗嬢。
