風俗嬢チエの風俗嬢ってどないやねん！！
明日は我が身【3】
「おはよーございまぁす！」
チエはその日、心なしかいつもより早く出勤した。
理由は他でもない。
ゆうかちゃんが来ているかどうかが、気になって仕方なかったからや。
しかし待機室に、ゆうかちゃんの姿がない。
「……ゆうかちゃんは？？」
チエはスタッフに尋ねた。
「連絡待ちです。」
「やっぱり、風俗は無理って……？？」
「いや、そういうわけではないんですが……」
「ほな何？ 昨日の２人目のお客さんに、何かされたん？？」
「いいえ。２人目が終わった時は、
『これからも出来そう』って笑っておられましたが……」
チエは、それを聞いて少しほっとした。
昨日、ゆうかちゃんを残して帰るとき、それだけが引っかかっていたからや。
「……じゃぁ、なんで来てないの？」
スタッフは、気まずそうに目線を落とした。
視線の先には、ゆうかちゃんを紹介してここに連れて来た、
ゆうかちゃんの友達の「ふうかちゃん」が、
心配そうに携帯を握りしめていた。
「ふうかちゃん、ゆうかちゃんは？？ 何かあったん？？」
チエは、ふうかちゃんを覗き込んで聞いた。
すると、ふうかちゃんは泣きそうな顔でチエに言った。
「チエさん、ゆうか、旦那さんにバレたんですよ。昨日のこと。」
「………え？」
ダンナサンニバレタンデスヨ
だんなさんにばれたんですよ
旦那さんに………
…………えぇぇっっ！？！？！？！？
チエはあまりに予想外の出来事に、思わず大声が出てしもた。
「ななななっっ！！なんで！？」
もうバレたの！？なんで！？
どっから漏れたん！？
チエはパニックになりつつ、ふうかちゃんに問いただした。
すると、ふうかちゃんの口から、おどろく返事が返って来た。
「実は、昨日ゆうか、自分から旦那さんにバラしちゃったんです」
…………はぁぁぁっ！？！？∑p(゜Д゜;）！？！？！？
ますますチエはパニックになった。
なんでだゆうかちゃん！？！？
キミ、何を考えているんだ！？！？
詳しく聞いた話ではこうやった。
ゆうかちゃんは、お金のために稼げる仕事はないかと
ふうかちゃんに相談してきた時、
まさか風俗を紹介されるとは思っていなかったらしく、
旦那さんのことを考えて、初めは抵抗した。
しかし、どれくらい稼げるかとか、
店側がプライバシーを守ってくれるだとか、
そういう話を詳しく聞くうちに、
「やってみたい」と、自分から言い出したそうや。
それほどまでに、必要なお金とは何やったんやろうか……。
そうして、ウチの店に体験に来たわけやけど、
仕事は、確かに１回目は緊張で自信をなくしかけたが、
チエが帰った後の２人目で、どうやら、結構自信が付いたらしかった。
帰るときには、すっかり笑顔で、
「明日から頑張れそう」と、言うてたらしい。
しかし、仕事と家庭は別世界……。
家に帰ったとき、予定外にもすでに旦那さんが帰宅しており、
イキナリ現実に引き戻されたゆうかちゃんは、気持ち的に余裕もなく、
問いただされて、テンパッて、とっさの嘘をつき通せなかったらしい。
いやしかし、とっさに計画的な言い訳が出なかったにしろ、
「風俗」とは言わなくても何とかなったんじゃないだろうか……
せめて、「昼キャバ」とか……
嫁に裏切られた中でも、「風俗をしていた」だなんて、
旦那さんにとっては、何よりも耐え難い屈辱やったやろう。
でもゆうかちゃんにとっては、「旦那さんをだますこと」が、
何よりも辛いことやったんやろうと察した。
もともと嘘をつくのも、そのことに平気な顔をするのも、
得意な子ではなかった。
それは、チエもゆうかちゃんの雰囲気から感じ取っていた。
きっと、昨日バレずに済んでいたとしても、今後、続ける限り
どこかで罪悪感に耐え切れなくなり、自分で白状していたかもしれへん。
それなら、「体験入店」だった昨日の段階で、
ふんぎりが付いて、逆に良かったのかもしれへんな……
なんて思ったりもしたが、どうやらそういうわけにもいかんかったようや。
「それで、ゆうかちゃんはどうしてんの？」と聞くと、
「それが、キレた旦那さんと大ゲンカになって、
ショックで体調崩して、今病院にいるらしいんです……」
「………ええぇぇっ！？！！？」
これまた、予定外にとんでもないことになってるやんか！！！
チエは、これがただごとではないことに、
このとき初めて、気付いたのである………
次回の「風俗嬢ってどないやねん」は5月22日アップの予定です。
チエ
大阪・ミナミの風俗3ねんせい。一緒に暮らしている彼にバレることなく仕事を続け、ガッポリ貯めこんでいる。
