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風俗嬢チエの風俗嬢ってどないやねん!!

風俗嬢チエの風俗嬢ってどないやねん!!

明日は我が身【4】

ゆうかちゃんからの連絡はなかった。

ゆうかちゃんを連れて来たふうかちゃんは、
状況的に今は自分から連絡することができず、
それでもゆうかちゃんの体の容態が気になって、
朝から携帯を握ったまま、
ずっとゆうかちゃんからの連絡を待っていた。

ゆうべ、病院の診察室から旦那さんの目を盗み、
電話で状況を教えてくれたゆうかちゃんは、
「またこっちから連絡する」と、泣きながら電話を切り、
それっきりメールひとつ、よこしてきていないそうだ。

もう、コレを聞いたチエは、気が気やなかった。

なんとか、ゆうかちゃんと連絡が取れへんものやろうか。

……いや、アカン。
おそらく旦那さんをイメージするに、
今日は仕事を休んででも、
ゆうかちゃんを監視しているに違いないと思ったし、
メールも着信も、おそらく全てチェックされているやろう。

ゆうかちゃんが、
スキを見て自分から連絡してくる以外に、
繋がる術はないと思ったんや。

こちらからは、今はきっと連絡をするべきやない。

あぁ……大丈夫なんやろうか……。

病院に行くぐらいって、
一体どれだけひどいケンカだったんや……。
いや、でも、
旦那さんの気持ちを考えると、なんとも言えん。
「自分の稼ぎが少ないせいで」とか
「好きで風俗を選んだわけではない」とか
きっとそんなこと、
今は冷静に理解できる器など持ち合わせていないだろう。

「自分の嫁が…」なんて、
チエの旦那でもきっと同じコトをするやろう……。
ゆうかちゃんの状況と、旦那さんが、
どうしたって自分と旦那に重なった。

他人事にとても思えへん。
どこでどんな拍子で、
今のチエだって、ゆうかちゃんと同じ立場になるか
分からないのだということを、急にリアルに思い知らされた。

チエは、ゆうかちゃんを心配しつつ、自分の携帯から、
お客さんのアドレスと、店のスタッフとのやりとりメールを
1つ1つ削除した。

そして、最近作っていなかった「偽造給料明細」
サボってた分すべて作ってもらうよう、スタッフにお願いをした。

ゆうかちゃんからの連絡は、店にも、ふうかちゃんにも、
その日1日来なかった。

でも、心配してもどうにもならない。

明日は我が身だ。

……結局、ゆうかちゃんの母親が間に入り、
ケンカは何とかおさまったということを、
後日ふうかちゃんから聞かされた。

とりあえず安心した。

しかし、もう当分パートだろうがなんだろうが、外出できない
軟禁状態になってしまったらしい。

まぁ、大事に至らず、離婚にもならなかったということで、
結果的にはいい結果に解決したと思うしかないだろう。

ゆうかちゃんの体は心配だが、
もう、こちらからは一切の関わりを絶った方がいい。

うん。
ゆうかちゃんは、旦那さんに対して、嘘をつける子ではなかった。
ずいぶん荒療治だったが、本人もそれがよくよく分かったやろう。

チエは今回、ゆうかちゃんに何もしてやれなかったが、
このことで、「ガードを固める」という初心を思い出すことができた。

旦那のためだろうが何だろうが、
この仕事をしていることは、
相手にとっては裏切り以外のなにものでもない。

中途半端に迷いながら働いて、結局中途半端にバレることが、
一番しちゃいけないことだ。

やるなら、すべての迷いと罪悪感を打ち消して、
とことんお金のために風俗嬢に徹さなければ、ならないのだ。
完璧な根回しをして。
墓までヒミツを持っていく覚悟で。

それが出来ないのなら、ちゃんと始める前に、
相手の理解を得てからにしないとダメなのだ。

チエは、
なんとなく、今の自分が「まったくバレテいない」という安心感から、
隠すガードが緩まっていることを、ゆうかちゃんに気付かせてもらった。

どうか、どうか。
ゆうかちゃんと旦那さんと、その子供が、これからより絆の深い、
良い家族になれますように。

そして、チエも早く目的を達成し、無事にここを卒業し、
今度こそ、旦那と2人、嘘も隠し事もない、
幸せな家庭を作っていけますように。

ココロからネガウ。

ココロからチカウ……

次回の「風俗嬢ってどないやねん」は6月12日アップの予定です。

チエ

大阪・ミナミの風俗3ねんせい。一緒に暮らしている彼にバレることなく仕事を続け、ガッポリ貯めこんでいる。

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